労働大学第4期中央講座 事務局通信NO21
前回の中央講座から約半年が経過いたしました。物理的な要素があるものの、講座が6ヵ月も開いてしまうのは如何なものか、とご意見を頂いております。しかし、仲間の多くはブロックで、県で、地区で懸命に学習し、活動されているからこその御意見だと受け止めています。そればかりか、安倍政権の暴走を許さないための日常の政治活動で奮闘せざるを得ない状況下、皆様の健康を願っております。
坂牛学長の現況ですが、リハビリで奮闘されておりますが、年齢も91歳を迎えておりますからその効果も十分ではありません。このようなときだからこそ、組織的学習に本気で取り組みましょう。
開催日時 2016年3月13日(日)
10時~16時30分
開催場所 王子岸町ふれあい館
講座内容 『社会を変える、自分を変える』
第四篇「新自由主義論」(レポ・四国B担当)
P236~256
- その理論と展開
危機脱出の模索/新自由主義とは何か/市場原理の貫徹/新自由主義の展開
- グローバリズム
多国籍資本の活動/現状分析の誤り/投資形態の転換/国家主権を従属させる多国籍企業/構造改革とは何か/反グローバリズム・反新自由主義のたたかい。
新自由主義論を学ぶに当たり、改めてマルクス・エンゲルス・レーニンの古典が重要だ、そのように思います。テキストもこのことを念頭に執筆されてきたのだと、学習を進める中で理解されます。特に『資本論』を土台として学習が進められないと、現在の新自由主義の展開の把握が不十分になります。受講生共々、学習に取り組んでまいりましょう。
まず前回の東京ブロックの仲間の学習から復習に入ります。
第3篇 「国家独占資本主義論」第一部「1929年世界大恐慌からの脱出」です。
レポートを提出してくれたKさんは「国家独占資本主義」の概念を正しく把握するために、テキストをさかのぼり、第一篇『資本論』のP93に示された図表を提起しました。
概念をハッキリさせるためには、歴史的な発展段階の認識が大切であることを始めに説明されています。大変理論的に整理された良いレポートでした。
そして、何がその後に続く「国独資の破綻」を導いたのか、その論争点は何かを、レポートで言います。「資本主義はその本質は変わらないが、現象は変化する」と発展の考え方で現状の分析が重要であることを示してくれました。テキストに入ります。
*国家独占資本主義とは何か
重要なのは「国家独占資本主義」は「帝国主義」の一つの局面だという理解です。資本主義社会における国家の役割についてその変化を含めて把握することが大切だ、ということです。「自由主義段階」の国家の役割がもっぱら「夜警国家」に求められたということです。
しかし、資本主義が帝国主義段階に変化することで、国家の役割が前面に押し出されます。何故か、それは資本の自立運動ができなくなること、この理解が重要です。帝国主義段階に移行するに当たり、レポートは、自由主義競争の中に「独占」の発生を、その要因として上げています。独占資本の発生と帝国主義段階への移行については、是非、関東ブロックがレポートしてくれた「帝国主義論」を思い起こしていただきたい。国家権力の力を借りて資本の運動を進めざるを得ない、これがキイワードにります。
それは、「植民地政策」を思い起こしていただければ「国家独占資本主義」に転化せざるを得なかった本質が理解されると考えます。
*第一次大戦後の世界経済構造
独占資本の成立で、循環期恐慌(マルクスが解明した)が変化したことです。一つは、恐慌の発生の原因である、商品過剰・資本過剰・物価暴落に対して、独占資本間の協定で、操業短縮により生産を縮小させます。その結果、価格は維持され、資本の破壊が回避されました。二つは、資本の破壊が回避されたことで、巨大化した固定資本は温存され、利潤率は低下し不況の長期化を招くこと。三つは、独占の発生は重化学工業や自動車産業に限られ、すべての産業が網羅されないということ。非独占部門では先に上げた恐慌の原因により恐慌が始まります。中小企業は物価暴落により、倒産が激増します。不況回復期では独占価格で維持された生産手段を維持および購入できず、不況が長期化します。
資本主義の危機は「戦争と恐慌」であることは共通の理解になっていると考えますが、第一次大戦後はこれに加えて社会主義社会の成立・階級闘争激化等で「全般的危機」に突入したことが上げられます。長期不況・恐慌克服の手段として帝国主義戦争を引き起こす経済構造に転化したことが上げられます。
*アメリカによる相対的安定
ヨーロッパ列強は戦費により経済は疲弊し、拡大再生産に軌道をのせることが困難になります。一方、アメリカは本土が戦争に巻き込まれることなく、さらに参戦の結果、債務国から債権国に転じました。ヨーロッパの資本主義諸国に比べ、相対的安定の時期に入ります。一方のヨーロッパは、ドーズ案(アメリカの過剰資本の処理を定めた)で、経済が再建されることになります。重要なのは、これら再建の目的は「自由主義段階」に戻ることが目的でした。
*1929年世界大恐慌
第一次大戦後の相対的安定も、1929年10月24日に発生した世界大恐慌で一変します。これまで経験したことのない大爆発した激烈な恐慌は、全世界に波及し、株価はもちろんですが、実体経済の崩壊がすさまじい勢いで噴出します。先に触れたように、全般的危機としての社会主義圏、そして特殊危機としての恐慌が発生したため、この時期は革命の情勢であったと言えます。
そして、この危機に直面した帝国主義各国の国家体制が「国家独占資本主義」です。理論として取り入れられたのがケインズ理論でした。一つは、アメリカのとったニューディール政策であり、日本やドイツが取り入れた戦時経済体制です。いずれにしても有効需要をどのように作り出すのかがとらせた政策でした。
*国家独占資本主義体制の本質
レーニンが国家独占資本主義体制の特質とした戦時統制経済体制は、アメリカが主導した自由主義経済体制に戻る努力を始めたことで、国家の直接統制は後退し、払しょくされつつありました。その他の国家独占資本主義体制についての異論は、共産党を始めに多々ありますが、我々は「帝国主義」と「国家独占資本主義」、つまり局面と段階の違いについてしっかり把握することが求められています。
*旧社会主義協会テーゼ
旧社会主義協会テーゼは、国家独占資本主義の本質を「一般的危機の時代における特殊危機、恐慌を予防し回避する体制である」と、明確にその概念を規定しています。テーゼの主要な規定は、一般的危機だけでは、資本主義は自動崩壊しないことを明確にしています。
特殊的危機は何を指すのか。1971年「『社会主義協会テーゼ』学習のために」のなかで、「国家権力の平和的移行に関する討論」で特殊的危機についてこのように規定してあります。
「革命の客観的条件そのものは資本主義の基本的矛盾そのものが作り出す客観的なものとして厳密にとらえる必要があるのではないか」さらに「恐慌その他の形で矛盾の爆発をもたらすことはさけられない。その過程は同時にその矛盾を解決する主体的条件の成長の過程でもあるということについては、よほどの確信を持っていないと、極左的になったり、日和見主義になったりする危険があると思う」。に対して、向坂逸郎は、「そうです。それに対して確信を持たないと、何もしないで手をこまぬいていたり、逆に跳ね上がったりすることになる」と答えています。
*国家独占資本主義の具体的な展開
「恐慌回避と、予防の体制」の具体的内容は何か。
大別すると二つに類型化できます。先にも上げましたが、一つは、それはアメリカ、イギリスのニューディール型、二つ目は、ドイツ、日本、イタリアのファシズム型です。
アメリカのルーズベルトは、ニューディール政策で、イギリスの経済学者ケインズ理論のいう、経済財政政策(乗数理論)により総需要の創出を強めるるということで、その具体化は、①金本位制の放棄、金融制度改革 ②連邦緊急救済委員会設置による産業救済 ③巨額の公共投資事業(テネシー川流域開発公社・ダム建設)等 ④ワーグナー法制による労働者・労働組合活動の保障、でした。
一方のファシズム型では「ナチス型」が上げられます。1933年、当時のドイツの失業者は全労働者の三分の一に及んでいました。ナチスは政権奪取後、労働組合解散、労働基本権剥奪でワイマール体制を粉砕。新たな失業対策として「第一次4ヵ年計画」を推進し、公共事業による雇用、企業補助金による民間投資の拡大であった。その一方で財政の悪化、物価上昇で国際競争力が低下する。そのため、東欧・中欧を中心としたブロック経済圏を形成し、ドル・ポンド圏と対抗した。それでも借款が限界に達したため、35年、再軍備を宣言し、軍需産業を景気振興の柱とします。日本もほぼ同様の軍需産業の経済体制を進めたのです。
いわゆるブロック化の進行です。
*国家独占資本主義の失敗
前項でブロック化について触れましたが、ブロック経済圏を形成による利害衝突で、第二次世界大戦の引き金を引く寸前でした。お互いに他のブロック排除と利害の衝突で、第二次世界大戦の勃発によって、国家独占資本主義が失敗に終わります。
第二部 「国家独占資本主義の成功と破綻」
*第二次世界大戦後の世界経済、社会構造の変化
ブロック経済体制によって「帝国主義戦争」が引き起こされましたが、特に大戦後、ファシズムに対する民族解放闘争の激化がその後の世界の勢力地図に大きな変化が生じました。大戦が終了する44年「ブレトンウッズ」で協定が結ばれ、29年大恐慌を反省した国際間協定が結ばれた。一つは、国家独占資本主義体制の機能を保障する機関の欠如。二つは、単一国際通貨を国際機関で保障するシステムの構築であった。具体化されたのが、IMF、IBRDである。さらに自由貿易体制のための国際機関、GATTの成立でした。
*ブレトンウッズ体制とは
この国際協定は、一つは、ドルが1オンス=35ドルとし、国際間の貸借をドルで決済するという、ドルが基軸通貨になったことです。各国通貨はドルに対する固定相場制をとること、為替相場を平価の上下幅に対して各国が1%幅に調整することが義務づけられました。二つは、金兌換がアメリカではできない事、その代わり各国は、自国通貨の下落を招いた場合には、国内の引き締めが義務付けられました。三つは、保護政策縮小で、関税障壁を取り除き、自由貿易の拡大に努めることでした。
*戦後国家独占資本主義の成功
資本主義にとって恐慌の回避は不可欠なことですが、戦後復興期の1950年~70年の間、国家独占資本主義は成功をおさめます。特に先進国の経済平均成長率はこの間、4・9%に達します。日本はどうかといいますと、戦禍によって生産設備等が破壊されましたが、その分先端技術が導入されやすく、良質な労働力によって、低コスト、高品質商品で国際競争力が高まり、経済発展が進みます。
*アメリカ経済の衰退
ブレトンウッズ体制はアメリカの卓越した経済力及び軍事力によって維持されてきましたが、国際収支の悪化で「金」の流出が続きます。原因は、日本・ドイツの発展で、貿易赤字が拡大したこと、さらに軍事援助・復興援助による経常赤字を累積させたことです。
*国家独占資本主義の破綻
象徴的なのは、71年、ニクソンによって「金・ドル」交換停止、これによって「固定相場制」が崩壊したこと、さらに73年「変動相場制」への移行です。このことでブレトンウッズ体制は崩れました。戦争と恐慌回避を目的とした国際間協定が崩壊したのです。大戦後の国家独占資本主義がブレトンウッズ体制の下で恐慌を回避し、空前ともいえる高度成長を果たしてきましたが、「金・ドル」交換停止の直前、ベトナム戦争終結と共に、アメリカの繁栄を支えてきた軍需産業の衰退で深刻な戦後不況に見舞われます。
産軍共同体で蓄積された過剰資本は「撤兵」で需要を失いアメリカは恐慌の危険が生じます。しかし、「金・ドル」交換停止で金とドルが切り離されていたため、ニクソンは「ドル」を大量発行で一時的には「恐慌」を回避させます。だが、過剰資本を廃棄することができず、巨大独占企業および金融機関は、過剰生産設備、過剰貨幣資本を抱えたまま、長期不況に突入します。不況が続く中でインフレの高進という状況で、ニクソンは総需要引き締め政策をとります。さらに、この政策でもアメリカの不況は深化し続けます。そのため、75年に政策転換が試みられます。恐慌阻止するための対策は、財政支出拡大、減税、救済融資等を発動します。その政策によりかえってインフレを高進させるという極めてまれな現象である「不況下におけるインフレ」=スタグフレーションに見舞われます。
テキストでは「新しい巨大設備投資を引き起こす誘因のないところで国家が通過、信用膨張、財政赤字拡大の不況対策を取り続けるなら、不況下のインフレは当然である」と述べていますが、出口のないニクソンの政策でした。
その上、ニクソンは74年「対外投融資規制」を撤廃し、新たに金融自由化を推し進めたために、アメリカの独占企業は海外へ生産拠点を移し「多国籍企業」として活動を活発化します。当然の結果ですがアメリカの国内設備投資は減退し、金融緩和による過剰流動性は投機資金として使われ、経済は不安定な状態に落ち込みました。
帝国主義に組み込まれた資本主義諸国もほぼ同様の軌跡を取り、スタグフレーションは進行しました。
「恐慌を予防し回避する」目的で協定が結ばれた国家独占資本主義体制=ブレトンウッズ体制は、その機能を喪失し、破たんしました。
ここから「最適地生産」に基礎を置く「新自由主義」という「海図なき航海」に世界の資本主義は乗り出すのですが、以下は、四国の仲間による『新自由主義論』で学習したいと考えます。
以下、3月13日開催の「第四期労働大学中央講座」での四国の仲間の問題提起を受けることにします。
次回カリキュラム
第二部門 第四篇
『新自由主義論』
第一部 その「理論」と展開
*危機脱出の模索
*新自由主義とは何か
*市場原理の貫徹
*新自由主義の展開
第二部 グローバリズム
*多国籍資本の活動
*現状分析の誤り
*投資形態の転換
*国家主権を従属させる多国籍企業
*構造改革とは何か
*反グローバリズム・反自由主義のたたかい
追 記
過日、県協連ニュース№116号で、第12回県協連総会発言の報告で、山梨県協議会・小田切 博さんの、学長発言についての記述について、御意見を頂いております。文言そのものからは誤解を生む表現になっています。「価値法則」についてです。
学長の真意が抜けていることもあり、誤って受け取られる表現です。労働大学事務局では、「坂牛教室」で学んできましたので、特に「価値法則が貫かれない資本主義に入った」という表記も「きわめて価値法則が貫きづらい資本主義」という理解をしてきました。資本主義の発展による有機的構成の高まりで「利潤率」低下に関して、「貫きづらい」と標記すべきでした。「最適地生産」でも物が売れない資本主義、併せ、70年代以降の社会的総生産の低下、資本が自立できない中での「国家の介入」、これらが相乗して起こる現象でした。「価値法則」については今回の中央講座で、事務局の捉え方を提出し、皆さんの議論で、マルクスの言う理論展開を整理することといたします。